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「重文 夏秋草図屏風 酒井抱一筆」 公開
本館7室 2006年8月8日(火)〜2006年9月18日(月・祝)

夏秋草図屏風
重文 夏秋草図屏風 酒井抱一筆 江戸時代・19世紀 東京国立博物館蔵
 「夏秋草図屏風」は酒井抱一(ほういつ)の傑作としてよく知られた作品です。もともと尾形光琳(こうりん)の「風神雷神図屏風」(重要文化財・東京国立博物館蔵)の裏側に描かれていたものです。しかし、閉じると外側に露出する屏風の裏面は、収納や移動の際に傷つきやすいため、昭和49年(1974)の解体修理の際に分離され、それぞれ独立した屏風に改装されました。

 10数年前に「夏秋草図屏風」の下絵(東京・出光美術館蔵)が発見され、その袋の一部と思われる紙に書きつけられた抱一の墨書から、この屏風が第11代将軍徳川家斉(いえなり)の実父にあたる一橋治済(はるなり)の注文によって文政4年(1821)頃に完成したこと、屏風表裏の取り合せが抱一の制作当初からのものであったことが明らかとなりました。表の金地に対して裏を銀地とし、雷神の裏に夕立に打たれて頭をたれる夏草を、風神の裏に野分の風に吹きあおられる秋草を対応させたことなどは、すべて抱一自身の構想であったことが確認されたわけです。屏風の表裏の絵は、あたかも連歌・連句における付合のようにみごとな呼応をみせています。そして確かに、裏として使われたとき、つまり折り目を手前にして立てたときに、各隻(せき)両端の空間が一段と奥へとひろがって見えるようです。今回もそのような折り方で展示いたしますので、ぜひ会場で抱一の意図した空間構成を確かめていただきたいと思います。

 姫路藩主の次男として生まれながら、若くして大田南畝(おおたなんぼ)や山東京伝(さんとうきょうでん)らとの交流を深め、ついには出家を果たして、画家および俳人として風流三昧の人生を送った抱一は、光琳に私淑(ししゅく)してその百回忌を営むとともに画集や印譜を出版しました。一橋家に伝来した光琳画の裏に描くことを許された抱一は、きっと心を込めてこの絵を描いたにちがいありません。

 玉蟲敏子氏の最近の研究では、この屏風の成立に文政4年3月から6月にかけての旱魃(かんばつ)と雨乞いという社会背景があったことや、当時、幕藩体制の守護神ととらえられていた風神雷神図に相対する裏側の銀地の草花図には、抱一が身を置いた遊里の洗練された美意識が形象化されているなどとの興味深い指摘がなされ、単に抱一の光琳への私淑という文脈だけではとらえきれないさまざまな意味が盛り込まれているという事実が明らかになりつつあります。

今回の本館7室では、江戸時代の屏風作品を展示しています。
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